マウナケアの望遠鏡建設に関するまとめ
ハワイ島のマウナケアで起きた望遠鏡反対運動についてご存知でしょうか?
7月から頻繁に地元のニュースで取り上げられていて、ハワイだけではなくアメリカ本土も巻き込んだ大きな騒動になっています。
ハワイ島といえば数年前から日本からの直行便が復活し、またヒルトンやウィンダムのタイムシェアも複数あるので行かれる方が多いと思います。
しかし、この望遠鏡の問題は一部のニュースでは取り上げられましたが、そこまで詳しい情報が日本語で解説されていません。自然豊かなハワイ島がこのような形で注目されることは非常に悲しいことですが、今回はこの問題についてまとめました。
騒動の概要
ハワイ島にあるマウナケアに新たに望遠鏡(TMT)を建設する為に工事が開始されようとしたところ地元やハワイの住人によって反対活動が起こり、道路が占領され、建設資材などが運べなくなりました。反対活動をした者の中には逮捕者も出て、アメリカ本土で活躍するハワイ出身の芸能人なども抗議の声明をSNSや、実際に現地に行き抗議活動するなど大きく話題になりました。
そもそもTMTとは?
TMTはThirty Meter Telescopeの略称で、口径30メートルの史上最大の大きさの望遠鏡です。すでにマウナケアにある「すばる望遠鏡」の10倍以上の面積の主鏡を持っています。
日本、アメリカ、カナダ、中国、インドの国際協力によって、プロジェクトが進んでいます。
参照:国立天文台 TMTプロジェクト ウェブサイト
TMTの目的は?
従来の望遠鏡の限界をはるかに超える解像度、集光力、感度を持つTMTによって、今までに解けなかった天文学の謎の解明を目指しています。
1.地球型惑星の発見
2.太陽系外惑星に生命がいないかを探る
3.宇宙がどのように作られたか解き明かす
TMTの高い解像度と集光力によって、惑星表面の反射光、大気を通過した光を観測して生命に関連した酸素や有機物の検出を目指す
参照:国立天文台 TMTプロジェクト ウェブサイト
なぜマウナケアに建てるのか?
ハワイ・マウナケアは、世界で最も天文観測に適した場所のひとつだからです。
適している点は、天気のよい日が多いこと、風の流れも安定しているため星像がきれいなこと、標高が高いため水蒸気による光の吸収が少なく、可視光だけでなく赤外線での観測にも適していることが挙げられます。
さらに、街明かりが少ない一方で、ふもとの街からは自動車で2時間程度で行くことができるので望遠鏡の建設・運用面でも良い部分が多いです。
そのため、1967年から天文学管区 と呼ばれる特別土地用途区域となっていて、ハワイ大学の管理をもとに、各国の研究機関に土地が貸し出されています。現在13基望遠鏡があります。
TMTプロジェクトで日本が担っている役割は?
TMTプロジェクトは、複数の国が協力して進められていますが、日本はどういった役割を担っているかご存知でしょうか?
日本は望遠鏡本体構造の製作と、光を集める主鏡分割鏡の製作を担う予定です。
高い技術を要する非常に重要な役割を日本は担っています。
参照:国立天文台 TMTプロジェクト ウェブサイト
なぜ反対活動が起きているの?
マウナケアはハワイアンにとって神聖な場所で、信仰の対象です。さらにハワイ島の地下水源脈です。
ハワイアンにとって特別な場所であるにも関わらず、宇宙の研究の為にすでに13基の望遠鏡が設置されています。
これ以上の天文台の設置は、水質汚染の問題、大きな建設物による気流の変化によって気象への影響の懸念、生態系などへの影響への懸念があり、ハワイアンだけではなく、地元の人やハワイを愛する世界中の人が建設の中止を訴えています。
TMT側の取り組み
マウナケアの環境保護、ハワイ文化の尊重と地域社会への貢献、次世代への教育支援を行っています。
環境保護:山頂に廃棄物を残さない新設計。建設用地は、景観への影響が比較的小さく、希少で絶滅の危機に瀕した植物や昆虫、動物へのリスクがない場所を選定。リース料として年間100万ドルを払い、そのうちの80万ドルは、マウナケアの保護と管理に直接使用される予定です。
ハワイアンの文化への敬意:考古学上の神殿や埋葬地が発見されていない場所を建設用地を選定しています。また、マウナケア山頂より下の溶岩面にあり、クカハウウラ山頂やワイアウ湖、プウ・リリノエといった文化的に特に配慮が必要な場所からは見えない位置です。
現在の状況
現在、反対運動の為に封鎖されていた道路は使えるようになり、封鎖によって中断していた既存の望遠鏡の作業も再開しました。また、建設開始を2021年まで延長することが国土天然資源省(DLNR)によって承認されました。
まとめ
科学の発展、宇宙の解明という部分で大きな期待のあるTMTですが、ハワイアンにとって特別な場所で環境への影響も不安な人も多いのは事実です。
また、仮にTMTが完成するとそこには大きな雇用もうまれ、地元の人の中には建設を賛成する人もいます。
非常に難しいこの問題ですが、最新の情報が入りましたらまた、お知らせします。